自然共生サイトの認定およびERMの自然資本関連サービス
自然共生サイトの認定
2026年3月、弊社が支援する放棄里山林の回復活動(以下、「本活動」)を実施するエリアが、環境省の制度である「自然共生サイト」に正式に認定されました。
自然共生サイトは、「地域生物多様性増進法[1]」に基づき、従来の保護区ではカバーされない、民間等による保全エリアを特定・認定する基幹制度です。保護区と重複しない場合には、OECM[2]として登録され、グローバル目標である「30by30[3]」達成に貢献するものとして位置付けられます。
本活動の概要と評価ポイント
本活動は、長年管理されず荒廃した里山林に適切な手入れを行うことで、里山林が本来有していた生物多様性を回復させる取組です。繁茂したササの刈払い、動植物モニタリングの実施等を通じ、生物多様性の回復を進めています。また、事業者、土地所有者である行政、森林組合、森林アドバイザー、生物調査会社、学識有識者など、地域の多様なステークホルダーと連携した実施体制を構築しています。
自然共生サイトに認定されるにあたり、特に以下の3点が評価されたと考えられます。
1.「回復タイプ」としての先進的な取組
本活動は、自然共生サイトの法令化に伴い新たに認定対象として位置付けられた「回復タイプ」として認定された、現時点で数少ない事例の一つです。本タイプは、放棄森林や荒廃農地等において、過去に失われた生物多様性の回復を目指す取組を対象としています。
なお、こうした活動は、日本の生物多様性が直面する危機の一つである「自然に対する働きかけの縮小による危機」[1]の解決に資するものであり、国内に多く存在する放棄林への展開の可能性を有しているといえます。
2. 地域ステークホルダーと連携した実施体制
本活動では、地域の森林組合や行政、学識有識者等と連携し、現地の状況・課題を踏まえた取組を設計・実施しています。こうした協働を通じて、里山林の管理不足や森林荒廃によるイノシシ被害の増加[2]といった地域課題への対応にも寄与しています。
地域の多様なステークホルダーとの連携を通じて地域と自然資本のつながりを捉え、地域課題の解決にも取り組んでいる点で、ネイチャーポジティブの実現に向けて重要視される「ランドスケープアプローチ」[3]の実践例としても位置付けられます。
3. 地域の実態に則した指標設計、活動やモニタリング
本活動では、対象とする生態系(里山二次林)の特性や荒廃状況を踏まえ、指標設定および回復活動、モニタリングを実施しています。さらに、学識有識者の助言を取り入れることで科学的な妥当性を担保するとともに、地域の森林組合や生物調査会社の知見を反映し、実態に即した指標設計および回復活動の実施を行っています。
生物多様性は、地域により大きく異なるため、一律の指標による評価には限界があります。本活動は、地域特性に応じた柔軟な設計と実施がなされている点も評価されたと考えられます。
自然資本をめぐる潮流と企業の課題
国際的には2020年の昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の採択、2023年のTNFDの最終提言の公表など、企業に対するネイチャーポジティブ実現への対応要請が高まっています。日本国内においても、「生物多様性国家戦略2023‐2030」の策定や、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025‐2030)」の公表など、政策的な道筋の整備が進んでいます。実際に日本企業の取組も拡大し、TNFDに沿った情報開示を進める動きが広がっています。一方で、取組の現状としては、情報開示に偏る傾向がみられるほか、既存の施策の整理・開示にとどまるケースも多くみられます。
私たちの生活や企業活動を支える生物多様性は損失し続けています。今後は、ネイチャーポジティブ実現に向けて、単なる開示にとどまらず、実際に生物多様性の改善に寄与する追加的な取組の具体化・実施、さらに、そうした活動を企業価値および地域価値の両者の向上につなげていくことが、より一層重要になると考えられます。
ERMのBoots to Boardroomのサービス提供による一貫支援
弊社では、「Boots to Boardroom」というコンセプトのもと、現場レベル(Boots)から、経営レベル(Boardroom)まで一貫した支援を提供しています。自然資本分野では、例として以下のようなサービスを展開しています。
Boots(現場レベル)
- 地域のステークホルダーと連携した自然再生・回復活動の設計・実行支援
- 自然共生サイト申請支援
- 事業開発・操業に伴う環境影響評価・モニタリング
Boardroom(経営レベル)
- 生物多様性に関する戦略策定、セミナーの実施
- TNFD対応・情報開示高度化支援
- ネイチャーファイナンスの導入支援
本活動のように、現場の生物多様性の保全に関する知見と、経営戦略や情報開示に関する知見を接続し、両者を相互に連動させて価値を最大化できることが、「Boots to Boardroom」を体現する弊社の強みです。
ネイチャーポジティブへの移行が加速する今、お悩みの企業様からのご連絡をお待ちしております。ご関心やご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ダウンロードはこちら[1] 人間の日常生活や経済活動に伴う適度なかく乱によって豊かな生物多様性が育まれてきた地域において、人口減少や高齢化などに伴い適切な管理が行われなくなり、その結果として生物多様性が低下していることが課題となっている。例として、里地里山の薪炭林などは、間伐などの適切な森林整備が行われない場合、生息地としての質、生物多様性が低下する。
[2] 放置された里山林は、イノシシが好む環境となるため、増加したイノシシが周辺の生態系や農林業へ被害を及ぼすことがある。
[3] 「生物多様性国家戦略2023‐2030」では、「一定の地域や空間において、主に土地・空間計画をベースに、多様な人間活動と自然環境を総合的に取り扱い、課題解決を導き出す手法」と定義される。
[1] 正式名称「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」(2025年4月施行)
[2] OECM(Other Effective area-based Conservation Measures):保護区以外の効果的な地域ベースの保全手段
[3] 2030年までに陸域・海域の30%以上を保全する国際目標