本年1月22日、欧州連合(EU)において包装材・包装廃棄物規則(PPWR)が官報に掲載され、2025年2月11日に発効されました。これは、欧州グリーンディールに基づき通知された新循環型経済行動計画(CEAP)沿うものです。本規則の背景には下記の状況があります。

  • 2010年から2021年までの包装廃棄物統計によると、EU域内で使用されるプラスチックの40%と紙の50%が包装に使用されている。
  • 包装は都市固形廃棄物の36%を占め、これは1人1日あたり5 kgの包装廃棄物排出に相当する。2021年の包装廃棄物排出量は2010年比で24%増加し、このままでは2030年にはさらに19%増加する見込みである。
  • 生成される包装材の量が多量かつ継続的に増加していること、また再利用と回収のレベルが低く、リサイクルが不十分であることが、低炭素循環型経済の実現に対する大きな障害となっている。

主要な要件と適用時期は以下の通りです。個別に適用時期が定められた規定を除き、発効の18ヶ月後(2026年8月12日)から適用される予定となっており、製造者、輸入者、小売業者、廃棄物管理会社など、EU内の包装サプライチェーンに関わるすべての関係者はその対応を検討する必要性が生じているのです。日本企業としても、EU内の取引先等が法規制を遵守できるよう、PPWRの要件を満たした包装材を使用し、EU向けに製品を輸出することが取引先等から求められることになるものと想定されます。

(1)有害物質の使用規制(第5条)

  • 包装中の鉛、カドミウム、水銀、六価クロムの合計濃度を100 mg/kg以下に制限。
  • 2026年8月12日から、一定以上のペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)を含む食品接触包装材の上市禁止。
  • 懸念物質の存在・濃度が最小限となるよう製造する

(2)リサイクル可能な包装(第6条)

製造者は委任法と実施法に基づき包装を評価し、附属書II表3に示されるA~Cの性能等級に区分する。2030年1月1日または委任法発効2年後のいずれか遅い時期以降は、A~Cの評価を満たす包装のみ上市可能。2038年1月1日以降は、AおよびBの評価を満たす包装のみ上市可能。

(3)プラスチック包装の最低リサイクル含有割合(第7条)

2030年1月1日または実施法発効3年後のいずれか遅い時期から、附属書II表1に記載の包装タイプ・形態ごとのプラスチック製包装に、指定された最低割合以上のリサイクルプラスチック含有を義務付ける。

(4)生物由来プラスチック包装(第8条)

2028年2月12日までに生物由来プラスチック包装の技術開発や環境影響等を検討し、必要に応じて生物由来プラスチック包装の持続可能性要件や利用拡大目標等の提案が行われる。

(5)堆肥化可能な包装(第9条)

ティーバッグ、コーヒーの個包装、果物・野菜に添付されるラベルは、第6条の適用除外となるが、2028年2月12日までに堆肥化可能とされなければならない。

(6)包装の最小化(第10条)

2030年1月1日までに、製造・輸入者は、包装が必要最小限の重量・容積まで削減されるよう設計されていることを確認することが求められ、附属書IVに準拠している包装のみが上市可能となる。

(7)再利用可能な包装(第11条)

上市される包装は、定められたすべての要件を満たし、再利用可能とみなされなければならない。

(8)ラベル表示(第12条)

材料構成情報、懸念物質情報、リサイクル含有割合、再利用可能な包装のラベル等が要求される。

(9)適合性評価(第38条)

製造者は、附属書Ⅶに定める手順に従って適合性評価を行い、附属書Ⅷにある適合宣言書を作成し、上記(1)~(7)の要件に適合する責任を負う。

なお、各要件の詳細については、委任法と実施法により明確化される予定です。

ここまでEUのPPWRについて述べましたが、包装に関する規制はEUに限りません。日本にも容器包装リサイクル法がありますし、その他多くの国で、廃棄物削減、海洋プラスチック汚染防止、温室効果ガス排出量削減等の観点で包装に関する規制があり、または設けられようとしています。国によって要件は異なり、例えば、使い捨てプラスチック包装材を禁止する規制、包装製品の数量・種類の報告を求める規制、ライフサイクルアセスメントとその開示を求める規制、包装材中含有物質(PFAS、重金属、可塑剤、鉱物油など)に関する規制、リサイクルしやすさを求める規制、リサイクル体制構築や生産者責任組織への加入を求める規制、リサイクル原料使用に関する規制、廃棄・リサイクルに関する表示に関する規制などがあります。また、包装や包装材などの定義も国によって異なりますので注意が必要です。

包装は多くの製品に対して施されるものですので、包装に関する規制は広い産業に、また多くの企業に影響を及ぼします。上述のように多くの国で様々な包装に関する規制があることから、グローバルに展開される企業様におかれましては、自社のサプライチェーンを把握し、自社製品そのものに対する規制だけでなく包装に関する規制についても、適用されるすべての国・地域、または地方の規制を把握し、遵守することが求められます。

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