世界を動かす資源:重要鉱物の需要拡大
脱炭素社会の実現やデジタル化の進展により、リチウム、ニッケル、コバルト、レアアースなど重要鉱物の需要は今後さらに増加することが見込まれてます。これらの鉱物はEVバッテリーや再生可能エネルギー設備、半導体に不可欠であり、各国は安定供給確保に向け政策を強化しています。ネットゼロ達成の為には、2035年までに生産量を4倍に拡大する必要があり、2040年までに新規鉱山投資は8,000億米ドルに達する見込みです。日本も2030年までにベースメタル自給率80%以上を目指し、米国・豪州との連携を進めています。
供給が追いつかない構造的な課題
一方、重要鉱物のサプライチェーンは産出国が偏在し、精錬工程の多くは中国に依存しています。さらに、多くの上流の鉱山開発プロジェクトは、探鉱や初期開発を担う中小鉱山会社(ジュニアマイナー)が主導していますが、これらの企業は資本規模が小さく、金融機関や投資家は高リスクを懸念して投資判断に慎重です。この資金調達の難しさが開発の遅延を深刻化させています。こうした構造により、「需要は増えるが供給が追いつかない」というサプライチェーンのギャップが世界的な課題となっています。尚、弊社の調査では、開発から生産まで平均18年を要することが分かりました。
鉱山開発を遅らせる5つの要因
鉱山開発の遅延がボトルネックとなっていることから、ERMは世界300件以上の鉱山プロジェクトを分析し、約50名の主要ステークホルダーへのインタビューや専門家パネルへの参加を通じて、重要鉱物事業の迅速な開発を阻む課題を特定しました。その結果、以下の5つの主要な遅延要因が明らかになりました。
鉱山開発を遅らせる5つの要因
鉱山開発の遅延がボトルネックとなっていることから、ERMは世界300件以上の鉱山プロジェクトを分析し、約50名の主要ステークホルダーへのインタビューや専門家パネルへの参加を通じて、重要鉱物事業の迅速な開発を阻む課題を特定しました。その結果、以下の5つの主要な遅延要因が明らかになりました。
- リーダーシップとキャパシティ: 技術面に偏った意思決定と、環境・社会面への投資不足がプロジェクト進行を妨げる遅延要因。
- ステークホルダー対応: 地域社会や関係者との対話不足は、信頼構築を大きく阻む要因であり、持続可能な開発には双方向の対話が不可欠。
- 環境: 環境対応は改善してるが単一の対策では不十分であり、例えば、水ストレス地域では流域全体の水利用者や生態系への影響を含む複合的な対応が重要。
- 規制・許認可: 複雑で不透明な制度や調整不足が手続きを長期化させる遅延要因。
- 財政面: リスクとリターンの見極めや資金調達モデルの設計が課題。
求められるレジリエントな鉱山事業
これらの課題に対応するために、従来の技術中心のアプローチを見直し、環境・社会・ガバナンス(ESG)を統合したレジリエントな鉱山開発が求められます。具体的には、地域社会との信頼構築、早期段階における主要なデータ(環境社会面の情報など)の収集、気候変動リスクへの適応、透明性のある規制対応、資金調達におけるリスク管理など、多面的な対応が必要です。企業は、幅広いステークホルダーとの対話・協働を通じて、持続可能な鉱山開発を実現することが期待されています。
ERMのサービス
ERMは、重要鉱物事業に伴う複雑な環境・社会リスクを分析し、戦略策定から実行までを支援することで、企業の持続可能な成長と競争力強化を後押しします。ERMの現場レベルの知見・経験とESG要求事項を組み込んだ戦略的アプローチにより、クライアントが変化する市場環境に対応する意思決定を可能にします。
鉱山事業の遅延要因と対応策を詳しく解説したERMのレポートは、以下からご覧いただけます。
Mission Critical: Resilient mines for a modern society
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